6、視覚障害者に対する情報補償




情報の約8割は目から入ると言われています。そのため、視覚障害者は情報障害者とも言われます。そうした困難を補うためのものとしては、以下のような事業が挙げられます。

(1)点字図書館の役割


視覚障害者への情報提供は、身体障害者福祉法に規定される視聴覚障害情報提供施設を中心に行われています。
「点字図書館」「視覚障害者情報文化センター」という施設がそれで、全国には公立・私立(法人等)を合わせ約90館が存在します。
その規模は大小さまざまですが、そこでは基本的に点字図書・録音図書をボランティアの協力によって制作し、視覚障害者へ無料で貸し出しています。
視覚障害者は行動の不自由を有するため、貸し出しの多くは郵送(郵便法に基づき無料)によって行われます。
静岡県内には、公立の静岡県点字図書館と、静岡キリスト教盲人伝道センター(キリスト教図書専門)の2館が静岡市内にあります。

参考URL
視聴覚障害者情報提供施設等一覧(障害者ITサポートセンターも含む)(情報
提供・厚生労働省)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/w_access/pdf/index_02_06.pdf

日盲社協会員施設一覧 情報サービス部会(86施設)
http://www.ncawb.org/shisetsu.html

(2)サピエについて


点字・録音図書の作成には大変な手間と労力が掛かります。そのほとんどは、点訳・音訳ボランティアの皆さんたちの手に支えられています。
そうした貴重な図書を全国の視覚障害者に迅速に発送し、また、図書製作の重複化を避けるべく、視覚障害者情報提供ネットワークシステム整備事業(厚生労働省の補助事業)が進められ、平成22年4月より、それまであったナイーブネットを引き継ぐ形で、サピエ(視覚障害者情報総合システム)の運用が開始されました。

その普及と、IT機器の発達に伴い視覚障害者は、これまでのように最寄りの点字図書館を通して図書の貸し出しサービスを受けるだけでなく、手元のパソコンや携帯電話からサピエにアクセスする事によって、膨大な書誌情報(約56万件)を検索したり、点字データ(約14万タイトル)・音声データ(約4万タイトル)のダウンロードやストリーミング再生ができるようになりました。

参考URLサピエ  http://www.sapie.or.jp/

(3)プライベートサービスと対面朗読


日常生活に必要な資料(たとえば家庭用品の取り扱い説明書など)や、教育、職業、趣味などに個人的に必要な資料を点訳したり音訳するプライベートサービスは、点字図書館や各地のボランティアグループで行われています。
また、都道府県立・市立の図書館では、地域の視覚障害者を対象に対面朗読(視覚障害者が読みたい本や資料を専用の部屋で職員やボランティアが朗読すること)を実施している所もあります。

(4)点字出版事業


全国に約30カ所ある点字出版施設からは、年間200〜300タイトル程度の点字図書が出版されています。

参考URL日盲社協会員施設一覧 点字出版部会(27施設)
http://www.ncawb.org/shisetsu.html

点字で出版された図書の価格は、活字図書の数倍以上にもなります。1992年度から実施された点字図書給付事業(価格差補償制度)は、その差額を一定の条件により行政が補助し、視覚障害者が購入しやすくするものです。
現在は日常生活用具の品目として組み込まれ、その実施主体は市町村となっています。

(5)IT機器の利用

近年、IT機器の発達と普及によって、視覚障害者の情報環境も目覚ましい変化を遂げています。
パソコンや携帯電話の音声読み上げ機能や拡大機能を使って電子メールの送受信が可能となり、ホームページにアクセスすることによって、自らの力で知りたい情報を手に入れることができるようになりつつあります。
実はこのHPの記事も、全盲者自らが点字図書を参考に、ネット上の最新情報などを検索しながら、音声読み上げ機能を駆使してまとめています。
外出する際にも、電車の時刻表やレストランのメニュー、映画館や劇場の上映・上演スケジュールなどを事前に調べることができるようになり、大変便利になりました。
なお、視覚障害者用ポータブルレコーダー(デイジー図書再生機(点字図書館などから送られてきた録音図書を聞くための専用の機械)
点字ディスプレイ(パソコンに接続することによって画面上に表示された文字を点字で読むことができる装置)
視覚障害者用活字文書読み上げ装置(パソコンを使わずに、一般の活字文書などをスキャナーで読み取って音声で聞くことのできる機器)
視覚障害者用拡大読書機(本の文字を拡大して読むことができる弱視者用の機会)
情報通信支援用具(障害者がパーソナルコンピューターを操作するために必要となる周辺機器、またはアプリケーションソフト)
などは日常生活用具として認められていますので、購入を希望される方は、お住まいの地域の福祉課までご相談ください。

静岡県内には、視覚障害者情報機器アクセス支援グループ「CATS(キャッツ)」があり、音声パソコンやデイジー機器の操作方法についての指導や、会員相互の交流と情報交換を目的とした定例会を、東・中・西の3地区で毎月行っています。詳しくは以下までお気軽にご相談ください。

参考URL
CATS、視覚障害者情報機器アクセス支援グループ
http://www.e-switch.jp/cats/


引用文献
『視覚障害者の介護技術(改訂新版)−介護福祉士のために−』
監修・直居鉄
発行・YNT企画 2002/11/22

                      ライター  菊池 一郎

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